ブロックチェーンと分散型台帳に関する本を朝倉書店さんから出版いたします。この本の紹介を全4回で行うつもりです。前回は「ネイティブトークン流動性」の紹介をさせていただきました。
最終回である今回は、6章「ブロックチェーン/DLT の未来」の中から、「量子耐性の実現と量子コンピュータ技術の利用」という項の一部を紹介をします。
以下は本文からの引用です。
PoW では短い周期で制約の異なるまったく新しい問題が提示される.PoW のような課題を量子コンピュータが素早く解けるかどうかはわからない.
(中略)
公開鍵暗号に量子耐性をつけるためには,鍵長を伸ばせばよいという議論もあるが,鍵長を長くすると通常処理にかかる時間も当然増えてしまう.一方で,量子鍵配送技術を利用することで,情報の解読に必要な秘密鍵を自在に消すことができれば,ブロックチェーン/分散型台帳技術にできることはもっと増えると思う.
量子コンピュータについては、
①量子コンピュータで劇的に早く解ける問題(ショアのアルゴリズムが適用可能)とそれほど早く解けない問題(グローバーのアルゴリズムしか適用できない)がある事
②量子耐性がある(グローバーのアルゴリズムしか適用できない)暗号は実務で適用するには難しい(処理が重すぎる)事
等に触れるつもりでしたが、紙幅の関係で実現しませんでした。
ブロックチェーンは、単なる一つの技術ではありません。というよりも、
ブロックチェーンは、価値の移動をインターネット上で可能にするための技術の組み合わせだと考えています。
(例えば量子コンピュータという)一つの技術によって現存のブロックチェーン基盤は全て無に帰するかもしれませんが、ブロックチェーンが実現しようとしている世界は必ず来ます。であれば,ブロックチェーンとその後継たる分散型台帳技術の本書において、量子コンピュータはあくまでわき役だと思い、あえて省きました。